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「相姦獣夜」 田沼淳一/フランス書院文庫
フランス書院文庫で長編でも連作でもない短編集というのは少し珍しい気がする。過去のアンソロジーに掲載されていたものから2編と書下ろし3編が収録。再録も手直しはされている。 新作3編は、姉、妹、従姉がヒロインでここしばらくの田沼作品のテイストで非常にライトよりな雰囲気がある。 「こわれゆく姉」 過去作で言えば「淫獣の群れ」の前半に近い。姉を快楽で堕としてという流れは似ているけど、テイストが面白いほど違う。 特にコミカルに描いている訳ではないのに、外面はいいが弟に家事とか押し付ける姉弟の関係とか、薬で体の自由を奪われて、姉と姉の後輩達から性的な玩具にされてという冒頭シーンのおかげで、反撃が無理もないなあと感じて陵辱の雰囲気が薄い。何だかんだで姉の美しさは素直に賛美しているし、さっさと恋人関係になってしまうし。あとはエロゲとかエロ漫画を思わせる台詞回しが。 姉に同じ目にあわせて自由を奪いつつあれこれしていく描写は田沼淳一らしくエロかった。脇の描写とか実に良い。充分濃厚だけどもっと丹念に描いた長いのが読みたくもなった。冒頭のシーンももつと長く描いてほしかったし、その後で主人公が復讐を誓いつつ後輩の中学生達と仲良くなったりとかの部分も読みたかった。 どうでもいいけど、年齢設定、姉を女子大生くらいにしておいた方がぴったりと来たと思う。 「小悪魔な妹」 妹に体の自由を奪われて玩具にされたものの、抜け出して反撃して逆にメロメロにしてといった流れで、「こわれゆく姉」と構造は似ている。兄に彼女がいたり、同級生が好意を示したりしているのに嫉妬している辺りの可愛さとか、体の凹凸がはっきりしている田沼作品には珍しいスレンダー体型などで、印象は違っている。妹に限らず年下というのが珍しいか。 足コキされたり、足指を舐めさせられたり、とかフェチ行為もふんだんに入っていて、中学生の経験の無い妹にという部分とあわせて、好きな人には堪らないと思う。 最後で妹に友達を紹介させてそちらもとか、妹と一緒にとか考えている辺りがやや外道かな。これももっと尺があると見れたと思うと惜しい気がする。 「再会した従姉」 これは完全にエロコメディになっている。 幼い頃から憧れていた年上のお姉さんとの再会、いっそう綺麗になっていたお姉さんは実は昔から自分の事を好きで……といった流れなら、そのまま事に及ぶだけでも充分読める一品になるのに、あえてそれだけで終わらせていない。多少ぶっ飛んだ従姉の言葉とか、もう一人今の主人公の彼女がやって来て対立関係作ったりとか、母親が実に良い味だしていたりとか。実に面白い。 初めてのキスとか、コタツの中で隠れて口でとか、エロ自体は充分濃厚で両立させているのが凄い。エロマンガだとけっこうあるけれど。 最後にいろいろあって三人でという関係を築いているが、これもそこに至るまでをじっくり読みたかった。従姉も良いのだけど、ツルペタな同級生ヒロインの方もけっこう可愛いので勿体無い。 しかし、女の子に調教されるM気質でも、能動的に虜にする側でもなく、好意を向けられつつもおたおたして振り回される主人公というのは田沼作品の中ではかなり斬新かもしれない。ラブコメの主人公というか。 改めてみると単にヒロインが違うだけでなくて差異はそれぞれあるのが興味深い。 あと、今回の新作はどれも主人公が包茎なんだけど、何かこだわりだろうか。姉に馬鹿にされるのも、汚れているのを気にしていたら従姉に構わず口で咥えられてしまうのも、非常に良い描写だったけれど。 |
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